登 場

写真01 2025年の9月ごろに発売されました。月刊アームズマガジンの2025年10月号に紹介記事があります。 それによると東京店カスタムで200丁限定だそうです。定価は49,500円 (税込み)とのことです。

思い出せば、1年ほど前にアナウンスがあった時に予約メールを入れましたが、音沙汰無しなので 気分が下がっちゃって今回は購入を迷っていたら、友人が早速購入したので見せていただきました。


外 観

写真02 上写真は、アメリカ陸軍が購入したM1899 実銃と比較しています。 今回あらたに設置されたリバウンドレバーピンがモデルガンの方が太いことに気が付きます。 普通のビクトリーモデルの改修ですからネジ込み式で大きくなったものでしょう。仕方ないです。 実銃の方は6インチでハートフォードさんは5インチのようです。
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写真12 エジェクターロッドの先端にロック機構が無いことが大きな特徴です。S&W はシリンダーが反時計回りなので ヨーク開放方向の力が働くため、やがてエジェクター先端にもロック機構が設けられました。

左のウエッソン親子の特許図のように、当初はヨーク固定にプランジャが設けられていたようです。


写真03 HWS のモデルガンでは、素晴らしいラウンドバットのグリップに目が行きます。これは分解図を見て知ったのですが
Pocket's Gunsmithing さんの製作のようです。

ポケッツさんと言えば以前このハンマレスを持っていたのですが 素晴らしい出来栄えに感動しました。今回のグリップも素晴らしいです。


写真04 アップで見ると結構リバウンド・ピン径が大きいことに気が付きます。ハンマーピンと同じくらいです。 トリガーピンも実銃のようにわざわざ貫通させています。細かい作りに頭が下がります。 また、フレームラグが別パーツなのでこの製品はビクトリーモデル後期の物の改修品であることが分かります。

ビクトリーと比較

写真05 写真06 ビクトリー旧モデルとの比較ですが、シリンダーストップの入る溝が1899ではすごく奇麗に加工されています。 幅も少し広く感じます。切削刃物の跡が見られませんが、研削なのでしょうか?奇麗な加工です。 ビクトリーのグリップフレームはスクエアバットです。

CMCの名残

写真07 ハートフォードのビクトリーモデルは、もともとCMC から発売されていましたM19プラスチックモデルガンの 金型を利用して作られています。そのおかげでビクトリーのカスタムである1899もCMC の名残が見られます。 左側はフレームトップあたりの横線でCMCのM19とはリアサイトが全く違うので、ここで金型をやり変えた跡です。写真右のトリガーのグルーブ入りや 右上のM19刻印はわざと残してあるように思えます。

メ カ

写真08 お待ちかねのメカです。サイドプレートにプランジャーが無いことで分かりますが、ビクトリーモデルの後期型が原型になっています。したがってハンドのテンションはトリガー内のハリガネスプリングによっています。ハンドにピンが打ってあるのですぐにわかります。
写真09 写真10

いつもならリバウンドスライドのある所には別パーツが、これまた別の板バネと共にとりつけられています。 また、右のように実物では大変な板バネ加工を少しでも簡単にできる工夫が取られています。 忠実な再現も一方法ですが、このような価格まで考慮した再現も素晴らしいですね。


実銃メカ

写真14

左写真のように実銃のトリガースプリングは一体成型です。

造るのがめんどくさそうです。


写真13 写真15

ハートフォードさんのリバウンド機構の再現度は高いです。他のハンドやシリンダストップは 現行品のままです。まぁ買える値段に仕上げないといけないのでOKとしましょう。

実銃のハンドのテンションは、てこ式スプリングによってかけられています。

写真18 参考書籍はこちら

アマゾンやebay で2万から3万ですかね?
貴重なオールドモデルの記事が満載です。

  • Antique Firearms Assembly/Disassembly


 S&W 名機への道のり

写真23 写真26 1896年にS&W 社初めてのスイングアウト式リボルバーが登場しました。 コルトに遅れる事4年です。コルトのパテントに触れないように慎重に作られたようです。 こちらは、シリンダーを開くときは、エジェクター先端を引っ張ったようです。

シリンダストップはS&W No.2 リボルバーのようにフレーム上部に付いています。


写真22 すぐにバージョンアップが行われ、シリンダーを開く装置が付けられ、またエジェクターロッド先端には ロック装置が与えられました。

実銃のシリンダストップ

写真16 写真17 この時期のS&W のシリンダストップは、非常に精巧で複雑な作りをしています。 トリガー先端でシリンダストップの凸を押し下げて、トリガーが上がる時には凸が トリガー先端に押さえられて引っ込むようになっています(Fig.7参照)。

この小さなパーツにストップ自身のリターンスプリングまで組み込んでいるので部品製作が大変そうです。


大いなる進化

写真19 度重なるバージョンアップによって複雑なシリンダストップは、絶妙な長円のアイディアによってシンプル機構に変更されました。 シリンダストップ自身が長円の穴に従って前後に動くという素晴らしい発明です。

リバウンドスライドの進化

写真20 リバウンド機構の試行錯誤を続けていたS&W 社ですが、このパテントによって現代に繋がるリバウンドシステムが確立しました。 もうトリガースプリングの板バネは、必要なくなりました。 回転運動を直線運動で制御するという素晴らしい発明です。

トリガー形状の進化

写真21 写真24 S&W のリボルバーがコルトと決定的に違うダブルアクションの引き味を生み出すパテントがこちらです。 ハンマーに付いているダブル用のベロをトリガーが行き過ぎても、なおハンマーは落ちていません。 シングルアクションと同じ位置までハンマーは起き上がることが出来ます。これこそがS&W の 素晴らしい引き味を生む仕組みです。

メカの完成形

写真25
あとは、リバウンドスライドと連動したハンマーブロックだけですね。

おわりに

写真27 写真を撮らせてくれた友人に感謝です。またハートフォードさんに再現してくれてありがとうの 感謝をささげます。

一歩一歩バージョンアップしていくS&W の姿勢は素晴らしいものがあります。 ほとんど変わらないコルトと対照的です。

ハートフォードさんが、なんともマニアックな製品を販売してくれたおかげで、そんなことも学ばせてもらいました。 現代のS&W 名機の輝きが一層増してきました。ハートフォード様、これからもマニアのために邁進してください。