1977年(昭和52年)の最悪規制の結果、ほとんどのオートマチック・モデルガンを造ることが出来なくなった モデルガンメーカーたちは、試行錯誤を重ねていました。
あるメーカーはプラスチックのみに進み、あるメーカーは超精密な方向へと舵を切りました。 特徴ある製品群を発表するものの動作はいまいちなハドソンは、ここに デザインをかの有名なミコアームズの御子柴さんにお願いした製品を発表します。
当時では、MGC のプラスチック製しか存在していなかったコルト・ローマンのモデル化です。
さすがに御子柴さんの作品だけあってMGCやコクサイの物とは、実物コピー度が違います。
また、作動もスムーズで、シリンダー形状もきちんと再現されています。
登 場
1979年10月号に分解図が載りましたが、製品の写真は11月号に登場します。
ローマンのモデルガン1号は、1960年代からのモデルガンのラインナップが、ほぼ2次大戦の軍用モデルだった市場に MGCから1975年にプラスチック製で登場しました。コルトの近代リボルバーの登場は 新鮮なものでした。しかし、独自の造りを交えた製品にマニアは満足いきませんでした。 ハドソンは、そんな需要を見とおしたのでしょうか?金属製で、より本物度の増した製品を送り出しました。
実物グリップ
コルトからマーク3シリーズが発売されたのは1969年です。S&Wに押され続ける中、メカニズムを すべて新しくしたシリーズです。トルーパーが旗艦モデルで、オフィシャルポリス、ローマンが続いていました。 ローマンは当初は小さなグリップが着けられていましたが、やがて大きなものばかりに変わったようです。 この写真のグリップは、その大きな実物グリップを装着しています。
コルトのグリップはS&Wと違って右側も上部が薄く削られています。
私は高校生だった頃に1974年版のコルト社のカタログを通信販売で購入していました。
そのなかに掲載されたローマンの大きなグリップの写真を毎日眺めていましたので、モデルガンでも絶対に着けてみようと思っていました。
ハドソンのオフィシャルポリス、ローマン、コクサイ・トルーパーに実物グリップを装着しています。 どれも横方向からは、しっかり装着されています。やはりグリップはこれが恰好いいです。
ところが実は、どれもしっかりとは装着できていないのです。
ハドソンはフレームが薄くてグリップが締まりきっていません。
コクサイはフレーム自体が短いです。
まぁ、眺めるだけならば許容範囲でしょうか?
ミコアームズ
ハドソン・ローマンの右側には設計者のイニシアルと思われる IM が見られます。
ミコアームズの御子柴 一郎さんだといわれています。
ミコアームズがGun 誌に登場したのは1975年です。もっぱら鉄製の長物を製作しています。
当時は46年の金色規制(1971年)を乗り越えてモデルガン業界が最高に輝いていた時代です。
団塊の世代が20歳を過ぎ、社会人となり高級モデルガンも購入できる世代が登場していました。 六研やウエスタンアームズの真鍮モデルやミコアームズの鉄製長物が高額で販売されており、 少年たちの「大人になったら買えるんだ」という夢をあおっていました。
1977年の52年規制によって鉄製長物は作られなくなり、ミコアームズも活動をやめたようです。
その後ハドソンから発売されたM1 ガランド、M14 は御子柴さんの設計ではないかと思います。
外 観
実物写真と並べてみましたが ハドソンのハンマーが分厚いのが目立ちます。
トリガーガードはどうでしょう?
実物の方が少し大きくも見えます
右サイドのトリガー上の 2個のピン位置も少し違います。
リコイルシールドも 厚みがが少し違いますか?
しかし全体としてはよく雰囲気を再現しています。
ハドソンのローマンのもっとも優れているところは、シリンダーのフル・カウンターボアードを コピーしているところです。(シリンダーの後端面をカートのリム分だけ削っているところ)
先行したMGC プラ製も後から登場したコクサイもここは再現していませんでした。
ハドソン登場の1年後にコクサイからも金属モデルが発売されました。
ローマンとトルーパーです。 しかし、写真のローマンのごとくシリンダーのカウンターボアードは再現されませんでした。 ハドソン以外ではこの15年後にKSC からマーク5シリーズがプラスチックで発売されるまで 再現されませんでした。
ちなみにコクサイのマーク3シリーズは、メカの設計が悪くて、すぐに壊れます。
ハドソンから同時発売されたオフィシャルポリスとは、バレルの太さが違います。
オフィシャルポリスは、軽量バレルでローマンはヘビーです。
実物もそうなっています。オフィシャルポリスは38スペシャルしか撃てません。
357マグナムはトルーパーかローマンでないと撃てません。
大きさ比べ
ホビーフィックスのディテクティブと並べてみました。
当たり前ですが、ローマンの方がごっついです。ディテクティブは357マグナムは撃てません。
ローマンはS&Wで言えばミリタリポリスにあたる大きさです。そのサイズでマグナムを撃てるアドバンテージを 持っていました。
コクサイのパイソンと並べてみました。
さすがにパイソンはでっかいですね。同じ357マグナムなんですけど。
メ カ
メカはたいへん良くできています。実物そのままの形状ではありませんが、取り付け方や 動作方式はきちんとコピーされています。
ボルト・スプリングの入るピンは、実物には存在しません。 このモデルガンを造るにあたって御子柴さんは実物を採寸してはいないと思います。 実物グリップが合わないフレームの厚さからそう考えました。 考察を重ねて実物同様なスムーズなメカニズムを再現していると思います。 出来栄えは一級品だと思います。
実物写真書籍と比べてみてもそっくりです。
実物を再現していないのは、トリガーストップスクリューと撃針止めピンあたりです。
(モデルガン写真のリコイルSPプレートは取り付けが逆だったかな?)
トランスファーバーの形状こそ違いますが、ハンドスプリングの取り付け方は再現されています。 トリガーやボルトも良く出来ています。このマーク3方式のトリガーは、まるで小林さんの設計した MGCモデルガンを参考にしたかのような2段制御方式です。
コルト社がS&W社に対抗して造り出した割には、S&Wそっくりなボルト方式など ハドソンのモデルガンはニュー・コルトメカの勉強に最適です。
カート
右上に357マグナムのダミーカートを置いています。
シリンダーインサートの関係でリボルバーのモデルガンのカートは一般に実物よりも 短いです。
箱
箱はオフィシャルポリスと同じ物なので、両名が記されています。
参考書籍
ショップマニュアルのコルト・ダブルアクションVol.2 がマーク3シリーズです。
Vol.1 は、パイソンなどのオールド・ダブルアクションメカの解説です。
おわりに
マーク3シリーズをかなり再現した貴重な金属モデルの紹介でした。メカ的には、のちのKSC マーク5 シリーズの方が再現度は大きいのですが、金属モデルのズッシリ感はハドソンでないと味わえません。
設計者の御子柴さんは、52年規制がなければ間違いなく六研の六人部さんと肩を並べるデザイナーに なったことでしょうが、規制の嵐に巻き込まれてしまいました。 御子柴さんは、その後正確なミニオートバイ金属モデルを製作されていましたが、今はどのような作品を 造られているのか私は存じておりません。
まともに動かないことが当たり前のハドソン製品の中にあって、素晴らしい動作を誇り、 かつてのミコアームズの香りを残すローマンのご紹介でした。